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編み物ってどうやって世界共通のものづくりになったの?~編み物のはじまり~

  • 執筆者の写真: マツイーヒロミ
    マツイーヒロミ
  • 4 日前
  • 読了時間: 8分

更新日:3 日前

ゆったりとした編み物の時間

「ものづくり」をしている時に、よく考えること、感じることがあります。


“糸を縫う針って、最もシンプルかつ無駄なく最大限に機能的だなぁ”とか


“糸をひっかけたりからめたり引き抜いたりして面や立体をつくろうとした人たちってどんな人だったんだろう?”とか


“いろんな編み方が生まれてくるのはなんとなく想像できるけど、それが共通な「編み方」になって広まったのはなんでなんだろう”なんてことを。



針と糸のシンプルかつ高機能なカタチ


近年、編み物ブームが再燃しており、特に若者を中心に、これまでにない広がりを見せていますね。


これは昨今のSNSの普及が多大な影響を与えているのだと思いますが、以前から、自分の作品を投稿したり、他人の作品を見たりできて、編み物に関する情報交換や質問ができる場としての世界中の編み手にとってのコミュニティサイトが存在したりしています。



編み物をするおばあちゃんの手元


おばあちゃん世代には趣味として、家族のものをつくるという慣習として、時に好きな人への贈り物をつくる手段として、存在していた「編み物」が、現代の孫世代の流行りとしてつながっていることや、世界中の人たちと「編み物」という共通言語でコミュニケーションがとれるということ。


よく考えたらすごいことだと思いませんか?


と、いうことで、早速調べてみました!


私の“なぜ?”を解き明かすべく、まとめてみましたので、皆さんも一緒に“へ~っ”と、雑知識のひとつとして読んでみてください。


今回は、「編み物の起源」についてです。





編み物のはじまり



編み物の起源は、その歴史が非常に古く、人類の生活に深く関わってきたため、正確な時期や場所を特定するのは困難だそうですが、考古学的発見や、ギルド(同業者組合)の記録( 編み物職人が組織した組合の規約や記録)などの情報から、そのルーツをたどってみました。



1. 最古の証拠と起源の地


定説:アラビア半島から中東・エジプト


編み物の技術は、およそ3,000年前にアラビア半島に住む遊牧民が、羊や山羊の毛を使って始めたという説が有力です。

彼らは羊とともに旅をしながら、その毛を編んで生活に必要なものを作っていたと考えられています。


現存する最古の編み物とされる遺物は、11世紀後半から12世紀前半頃にエジプトで発掘された靴下の一部です。


この靴下は非常に精巧に編まれており、複数の色で幾何学模様が施されていることから、この時代には既に編み物の技術が高度に発達していたことがうかがえます。



羊毛イメージ


編み物以前の技術


現在の「編み物」とは異なるものの、それに似た技術はさらに古くから存在していました。


「ナルバインディング(Nålbinding)」(ナールバインディング/ナルビンディング)


一本の針で糸をループさせて結びながら布を作る、編み物や縫い物、かぎ針編みの要素を持つ技術です。

ヴァイキング文化と関連が深いとされますが、世界各地で古くから行われていました。


紀元前7750年頃のドイツ、紀元前10000年頃のイスラエルなど、世界各地でナルバインディングの断片が発見されています。


紀元3世紀から5世紀頃のローマ時代のエジプトのつま先が分かれた靴下は、このナルバインディングの技術で作られたと考えられており、現在の編み物の前身と見なされています。




2. 世界への広がり

ムーア人・アラブ商人による伝播


中東やエジプトで発達した編み物の技術は、ムーア人やアラブ商人の手によって、スペインやフランスへと伝わりました。


13世紀には、スペイン王室のためにイスラムの職人たちが編み物を作っていたという記録が残っています。

この頃、スペインやドイツでは編み物職人のギルド(同業者組合)が作られ、編み物はひとつの専門職として確立されました。



ヨーロッパでの普及


羊毛の生産が盛んだったヨーロッパでは、寒さから身を守るために編み物が広く受け入れられました。


14世紀になると、聖母マリアが編み物をする様子を描いた絵画が複数描かれるようになり、この技術が広く知られるようになったことが示唆されています。


15世紀には、英語の「knit」(編む)という単語が初めてオックスフォード英語辞典に登場します。

これは古英語の「cnyttan」(結びつける)に由来します。


16世紀半ばには、「メリヤス編み」に加えて「ガーター編み」や「パール編み」の技術も確立され、より複雑な模様を作ることができるようになりました。


スペインのトレドで発見された1562年の墓の副葬品には、パール編みやレース編みの技術が使われた靴下が含まれていました。



羊毛を紡ぐ人


3. 編み機の登場と産業化

16世紀後半


手編みの時代は長く続きましたが、1589年にイギリスの牧師ウィリアム・リーが靴下編み機を発明したことで、編み物は手工業から産業へと大きな転換を遂げました。この編み機は、手編みの動きを模倣した最初の機械であり、大量生産の道を拓きました。




4. まとめ

編み物のはじまりは、中東・エジプトの遊牧民が羊の毛を使ったことから始まったという説が有力なのですね。

やはり、生活の中から自然に生まれた工夫のひとつなのでしょう。


目の前にある温かな羊毛を、どうにかして身に纏いたい、細くして結んでいけば密な面ができあがる、指で結ぶより、棒の穴に通してやってみたらやりやすい!


そんな試行錯誤をしている先人たちの様子が目に浮かびますね。


そして古代には、現在の編み物とは異なる「ナルバインディング」のような技術が存在し、それが編み物の発展に影響を与えたと考えられます。


最古の具体的な編み物遺物は11世紀のエジプトの靴下で、この時代にはすでに高度な技術が確立されていました。


その後、アラブ商人を通じてヨーロッパに広まり、特に羊毛が豊富な地域で発展し、生活必需品から芸術的な工芸品へと進化していきました。


ものごとが一気に広まる背景には、やはり「商品」として「大量」につくり、「商売」として異国へ運ばれていく、といった時代の流れが強くあるのですね。


さらに16世紀の編み機の発明は、編み物を手仕事から産業へと変え、現代のニット製品の礎を築きました。


このように、編み物は人類の歴史と密接に関わりながら、時代とともに進化してきたのです。


編み物を暮らしの中で生み出した人々、それを多くの人に届けたいと考える人々、さらにもっと大量に、効率的につくり出す方法を考え実践した人々、いかに体系的にしようかとまとめた人々の、個々の顔をぼんやりと想像できる段階まできましたね。


少し、すっきりしましたw


まだ、「編み物のはじまり」までですが、皆さんの手しごとや編み物への想い、私のように思いついた疑問などがありましたらぜひ教えてください。


私も編み物についてのすべてを知っているというレベルではないので、すぐに疑問にお答えするという訳にはいきませんが、面白そうなことは一緒に調べたりして、より深められたらと思っています。



次回は、始まった編み物がいかに長い年月を経て今のカタチになっていったのか。


「編み物の歴史」についてです。





おまけ


「編み物のはじまり」を調べていく中で知った「ナルバインディング」。


私の好奇心が“なに?なに?なに?それ!?”となってしまいましたので、少しこちらも詳しくまとめてみました。




「ナルバインディング」って何?
~編み物とは違う驚きの古の技術~



「ナルバインディング(Nålbinding)」は、直訳すると「針と糸で縛る」という意味のスウェーデン語です。


名前の通り、一本の専用の針(骨や木、金属などで作られたもの)と、一本の糸を使って布地を作り上げていく技法です。


この技術は、「編み物(Knit)」でも「かぎ針編み(Crochet)」でもありません。


  • 編み物:2本の棒針を使い、複数のループを同時に処理していきます。

  • かぎ針編み:かぎ針を使い、一つのループを次々と作りながら進めていきます。

  • ナルバインディング:一本の針を使い、糸をループに通して結びながら、少しずつ布地を作っていきます。


この作業工程は、まるで縫い物のように見えますが、単に縫い合わせるのではなく、複雑な結び目を作ることで、ほどけにくい丈夫な布地を作り出すのが特徴です。




驚きの歴史!ナルバインディングは超古代から存在した

ナルバインディングの歴史は、編み物よりもはるかに古いとされています。


考古学的発見から、紀元前7750年頃のドイツや紀元前10000年頃のイスラエルなど、世界各地の遺跡からこの技術で作られた布の断片が見つかっています。


特に有名なのは、紀元3世紀から5世紀頃の古代エジプトで発見されたつま先が分かれたウールの靴下です。


これは、ナルバインディングの技術で作られたものであり、その精巧さから、当時の手仕事の高さがうかがえます。


また、北欧のバイキングたちがこの技術を駆使して、手袋や靴下、帽子などを作っていたことでも知られています。

彼らの時代から現代まで受け継がれてきた、まさに「生きた化石」のような手芸技術なんです。




ナルバインディングの魅力とは?



なぜ、これほど古い技術が現代まで伝えられてきたのでしょうか。

その魅力は、主に以下の2つにあります。



ほどけにくく、丈夫


糸の結び目を一つずつ作っていくため、もし途中で糸が切れたり、ほつれたりしても、そこから全体がほどけてしまうことがありません。これは、遊牧民やバイキングなど、過酷な環境で暮らす人々にとって、非常に重要な特性でした。



独特の風合いと立体感


一つ一つの結び目が重なり合って作られる布地は、編み物とはまた違う、厚みのあるしっかりとした質感になります。

温かみがあり、手作りの温もりがより一層感じられるのが魅力です。


(手元に実際の作品がないので、画像にてご紹介することはできませんが、「ナルバインディング」「ナールバンディング」「ナルビンディング」で検索をすると出てきますので、ご興味のある方はご覧になってみてくださいね。)




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編み物ってどうやって世界共通のものづくりになったの?~編み物のはじまり~






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